■40代になると、転職は「希望」より「恐怖」が先に来る
40代になると、仕事も人生も「このままでいいのか?」という問いが急に重くなる。給料は上がらないのに責任だけ増え、家族のために働いているはずなのに、心はどんどんすり減っていく。
転職したい。でも、怖い。 失敗したら取り返しがつかない気がする。 ボクも、まさにそのひとりだった。
そんなボクの背中を押したのは、希望ではなく“闇”だった。
■常務の借金1000万円。会社の腐敗を知った日
係長として働いていた当時、常務が長年支えてきた社員や20代の若手まで、片っ端から金を借りていることが発覚した。その金額は1000万円を超える。
それだけの大罪を犯しながら、会社が下した処分は「降格」のみ。
「頭おかしいんじゃないか?」
腐ったリンゴを箱に残し、周りまで腐らせる経営判断。金を貸す方も貸す方だが、それを許容する組織のぬるさに、ボクの中で何かが崩れた(ボクは貸してと言われなかった)。
平均年齢55歳。守りに入った社風には、目標も熱量も存在しない。 係長だったボクの役職手当はわずか3万円。責任だけが増え、心は摩耗していく。
「この会社に未来はない」 そう確信した瞬間だった。
■心が壊れると、仕事は“事故”という形で返ってくる
「フレンチブルドッグを飼いたい」 「妻と競馬旅行に行きたい」 そんなささやかな願いすら、仕事への無気力に飲み込まれていった。
目標を失った40代は危ない。心が空っぽになると、判断力まで奪われる。
ある日、ボクはプロドライバーとして、取り返しのつかない過ちを犯した。
納品先へ左折した瞬間、視界から消えていた自転車を巻き込んだ。歩道を走っていた82歳のご年配の方だった。人身事故をしてしまったのだ。
あの瞬間の音、空気、時間の止まり方。 今でも忘れられない。
■事故と向き合い、ボクは退職を決めた
組織への不満、将来への焦り、腐った人間関係。 そんな「心のノイズ」が、一瞬の判断を狂わせたのだとしたら。
「誰かのせい」にしていたツケが、最悪の形で返ってきたのかもしれない。
事故の重みと向き合い、ボクは退職を決意した。
40代で会社を辞めるのは怖い。 でも、このまま続ける方がもっと怖かった。
■45歳、未経験。ハンドルを包丁に持ち替える決断
次に選んだ道は、物流とは無縁の「精肉屋」。
命を奪う側の仕事から、命をいただく仕事へ。 未経験45歳の再出発だ。
精肉の世界は、誤魔化しがきかない。 切り方ひとつで味が変わり、扱い方ひとつで価値が変わる。 自分の手で“確かな仕事”を積み重ねるしかない世界だ。
だからこそ、ボクはこの道を選んだ。 もう誰かの背中を追って嫉妬することはない。 自分の手で、自分の人生を取り戻すために。
■40代で転職が怖いのは当たり前。でも、人生はまだ変えられる
常務の借金1000万円。腐った組織。心が壊れ、事故を起こし、ボクはようやく気づいた。
「安定しているように見える今が、実は一番危ない」
40代の転職は怖い。 でも、怖いまま動かない方が、もっと怖い。
45歳、未経験。 ボクはハンドルを包丁に持ち替え、精肉屋としてやり直す道を選んだ。
これは、ボク自身の人生を取り戻すための物語。 そして同じように迷う40代の誰かの背中を、少しでも押せたらと思っている。


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