切れる包丁は、仕事を楽にしてくれるだけじゃありません。悔しさをきっかけに、もう一段うまくなりたいと思わせてくれる。45歳で未経験転職したボクにとって、今回の砥石選びはただの買い物ではなく、次の一歩を自分で作るための準備でした。
精肉店4ヶ月、会長の包丁に衝撃を受けた
包丁は切れればそれでいい。包丁研ぎも、なんとなく研げば十分——炭素鋼の正広べっ作を使って4ヶ月、精肉店でそう思っていたボクは、ずっとそんなふうでした。
鶏肉、豚肉、牛肉。毎日いろんな肉を切っていると、包丁が切れないのも仕方ない——切りにくい鶏皮や牛の硬い脂に少し力がいるのも、そんなものだと思っていたんです。
でも、ある日こっそり使ってみた会長の包丁は、まるで別物でした。
鶏皮を切った瞬間、「え?」と思いました。力を入れていないのに、包丁が勝手に前へ進む。牛脂も、いつもなら引っかかるところをスッと抜けていく。これが切れる包丁か。同じ肉を切っているのに、仕事のしんどさまで変わる気がしました。
正直、ショックでした。ボクも毎日研いでいたはずなのに、会長の包丁の前ではまるで別次元。研いだ直後は切れるから、それなりに満足していた——そんな自分が、あの瞬間はっきりわかりました。驚きも悔しさも、今でもはっきり覚えています。
▲ 精肉店で使う包丁。切れるかどうか——それだけだと思っていた頃のボク。
正直、そのとき同時に悔しさもありました。会長の包丁を使ったあとでは、自分はまだ全然わかっていなかったんだと気づかされました。
その悔しさが残ったタイミングで、たまたま競馬で当たったお金が手元にありました。砥石に使おう——自分への投資として、そう決めたんです。
先に結論|包丁研ぎは「なんとなく」では届かなかった
今回ボクがいちばん強く感じたのは、包丁研ぎは感覚だけでごまかせるものじゃない、ということです。
同じ角度で研ぐこと。刃かえりを取ること。刃先の状態をちゃんと見ること。たったそれだけの違いで、切れ味はここまで変わる——包丁の研ぎ方は、ボクが思っていたよりずっと奥が深かった。悔しかったですが、その悔しさがあったからこそ、家でもきちんと研いでみようと思えました。
40代で未経験の仕事に入ると、こういう「当たり前の差」に後から気づいて落ち込むことがあります。でも、それは遅いんじゃなくて、やっと本当のスタートラインが見えたということなのかもしれません。
- 45歳で未経験から精肉店へ転職
- 精肉店勤務4ヶ月の修行中
- 鶏肉・豚肉・牛肉を切る現場で、毎日包丁と向き合っている
- 将来はキッチンカーで全国の競馬場を回るのが夢
会長に教わった包丁研ぎのコツ
包丁が切れない原因を知りたくて、会長に「名刀を作りたいです」と聞いたとき、返ってきたのは初心者にも伝わる言葉でした。
試してみると、たしかに切れるようにはなりました。でも、あの会長の包丁のようなスーーっとした感じとは違う。だからゆっくり肉を切りながら、刃の感触を確かめるようにしてみたんです。
ボクの包丁は、スー..ザザ..ススー..ザザ..。切っているときに、どこかざらつく感じがありました。それが気になって、もう一度会長に聞いてみました。
なんか切ってる時に、ザラつき感があるんですけど…
え? 刃って、全部銀色じゃないんですか?
……ほんとだ。 黒い。
※刃先が黒く見えるのは、刃先が非常に薄くなり光を反射しにくくなるため、と一般的に説明されています。
同じ角度で研げば黒くなる——そう思ったけど、何度か仕事の合間に研いでも刃先は黒くならなかった。角度をつければ研ぐ時間は短いけど切れる期間も短い、と会長は言っていた。そこで今度は年下の先輩が、ぽつりとこんなことを言ってくれました。
このひと言で、ボクの中で少しだけ霧が晴れました。切れる包丁は、ただ研いだ包丁じゃない。刃先の形が整った包丁なんだ。そこにようやく気づけた気がしたんです。
初心者が包丁研ぎで失敗しやすいポイント
会長や先輩の話を聞いて、包丁研ぎ初心者のボクが当てはまっていたのはこの4つでした。
- 角度が毎回変わる——研いでいるつもりでも、刃先が丸くなるだけ
- 刃かえりを取っていない——表面だけ研いでも、裏側が膨らんだまま
- 仕上げ砥石だけ使う——中砥なしでは、ギザギザが残りやすい
- 力を入れ過ぎる——研ぐほど刃先の形が崩れる
ボクはこの4つ、全部やっていました。だから会長の包丁との差は、包丁の性能じゃなく、研ぎ方の差だったんだと、ようやく腹落ちしたんです。
黒幕1000とキング6000|ボクが選んだ理由
今までは昼休憩が終わったあと、まだ落ち着いている時間の30分を使って、店の砥石でチョコチョコ研いでいました。でも、それでは足りない。家でゆっくり研ぎたい——先ほど書いた通り、自分用の砥石を買うことにしました。
問題は、店で使っている砥石は名前も消えていたことです。年季の入ったものばかり。何の砥石か誰に聞いてもわからない。比較する基準が、そもそもなかった。だからこそ、家で使う中砥と仕上げ砥石は、自分で選ぶしかありませんでした。
先輩に「どれがいいですか?」と聞くのも少し気が引けました。いかにも「コイツ家でやってんな」と思われるのも、陰で努力してる感を出すのも、なんだか嫌だったんです。しれ〜っと精肉屋を紹介してくれた先輩に「貝印の砥石どーです?」と聞いたら、「いいんじゃない?」と返ってきた……その瞬間、ダメなんだと悟りました。
包丁は正広べっ作(炭素鋼)。店の砥石と違って、名前も番手もはっきりしているものが欲しかった。ChatGPTやAmazonの評価も見ましたが、最終的に頼ったのは「店では何もわからなかった」という経験のほうでした。
そこで選んだのが、中砥のシャプトン 刃の黒幕 #1000と、仕上げ砥石のキング #6000。まだ家では研いでいませんが、店の砥石と比べてボクが選んだ理由はこんな感じです。
- 店との差——名前も用途もはっきりしている中砥
- 研磨力——1000番で、ギザギザを整えやすそう
- 正広べっ作向け——炭素鋼の包丁研ぎで情報が多い
- 価格——仕上げの黒幕5000より手が届きやすい
- 店との差——仕上げ砥石として番手がはっきりしている
- 価格——黒幕の仕上げより安く買えた
- 仕上げに十分——6000番なら、家での包丁研ぎには足りそう
正広べっ作を4ヶ月使ってきた包丁研ぎ初心者のボクでも、家で本気で取り組めそうだと判断しました。まだ長期間使い込んでいないので、実際に研ぎながらまた追記していきます。
ボクが実際に買った砥石はこちらです。同じ炭素鋼の包丁を使っている方なら、参考になると思います。
※リンク先はボクが購入した商品です。価格・在庫はAmazonのページでご確認ください。
▲ 家で研ぐために選んだ黒幕1000とキング6000。自分への投資として、次の一歩を買いました。
店が夏場は日月休みの2連休になる。だからこそ、そのゆっくりできる休日を使って、家でじっくり名刀を作りたい。そう思えるようになっただけでも、ボクの中では大きな前進でした。
砥石選びで感じた45歳からの挑戦
今回のことで、ボクはひとつはっきりわかりました。できる人の道具に触れると、自分の足りないところが見えるということです。
それは悔しいです。正直、かなり悔しかった。でも、その悔しさがあったから、昼休みの30分で満足せず、家でちゃんとやってみようと思えました。これは包丁研ぎだけじゃなく、45歳で未経験転職したボクの毎日そのものだと思っています。
うまくいかないことがあっても、「まだ向いてない」で終わらせず、「まだ足りないだけかもしれない」と考えられるかどうか。そこに、次の一歩があるんだと感じました。
包丁の刃先を黒く細く整えるみたいに、人生も一気には変わりません。でも、小さくても確かな積み重ねは、ちゃんと切れ味になって返ってくる。そう信じて、ボクは次の休みに砥石と向き合おうと思います。
まとめ|悔しさの先に、次の一歩がある
会長の包丁に触れて、ボクは「切れる」と「研げている」の差を知りました。同じ角度、刃かえり、刃先の形——知っていることと、できていることは別物。45歳から始めた精肉の仕事でも、同じことが起きています。
悔しさを、そのまま終わらせない。それが、この記事の本当のテーマです。
本当に会長みたいな刃になるのか。次の休日、自宅で初めて本気で研いでみます。成功しても失敗しても、その結果はこのブログで正直に書きます。
包丁は一日では名刀にならない。ボクも、一日では職人になれない。でも昨日より少しだけ切れるようになれば、それで十分。45歳の挑戦は、まだ始まったばかりです。
この記事のポイント
- 会長の包丁で「切れる」と「研げている」の差を知った
- 初心者が失敗しやすい包丁研ぎのポイントを整理した
- 黒幕1000とキング6000を購入
- 45歳からでも上達は遅くないと感じた
同じように「もう一度挑戦したい」と思っている方に、少しでも届いたらうれしいです。
※この記事は筆者自身の実体験をもとに書いています。包丁や砥石の扱いは自己責任で行い、作業時は安全に十分ご注意ください。


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