- 精肉店3日目、売り物の肉の前でボクの手が止まった話
- 76歳の先輩と、同じ作業を並べたときの差
- 正広の包丁をもらい、160〜180gの豚ロースを切った日
76歳の背中に追いつけない
精肉屋3日目、ボクは初めて“売り物の肉”を前に手が止まった。
ぎこちない手つきで、1枚に悩む。その横で、76歳のおばあちゃんは迷いなく40gを積み重ねていく。速さも、正確さも、圧倒的だった。
それでもボクの拙さを笑わない。急かさない。ただ静かに、そこにいてくれる。
ボクが5枚終えたころには、もう15枚終わっていた。カッコよすぎる。それでも、おばあちゃんは笑わない。ただ、見ていてくれる。
包丁を拭きながら思った。明日もまた、この背中の隣で手を動かせたらいい。40代のボクが、76歳の背中に追いつける日は来ないかもしれない。それでもいい。今日の一歩を見守ってくれる人がいる。それだけで、十分だった。
40代未経験から精肉屋で働き始めた理由
人身事故をきっかけに、「このままでいいのだろうか」と立ち止まった元トラックドライバーです。悩んでいた中で生まれた夢は、競馬好きの妻と「肉×ワインのキッチンカー」で全国の競馬場を回ること——詳しくは未経験で精肉屋を選んだ理由に書いています。
このブログは、その夢の“付け合わせ”みたいなもの。同じように40代で悩んでいる誰かに、少しでも届けばと思って書いています。

創業100年以上の精肉屋に入った
10年以上前までは、唐揚げやコロッケなどの惣菜もあったらしい。けれど、会長の奥さんが亡くなったことをきっかけに、今はチャーシューだけを残している。店の歴史を知ると、働く場所に少しだけ愛着が湧く。

正広の包丁をもらった日
勤務3日目、お店から包丁をいただいた。名前は「正広」。家庭用よりずっと高いらしいその包丁を手にした瞬間、思った。
「ああ、もう逃げられないな」
ようやく、ここで働いている実感が湧いた。道具をもらうと、背筋が伸びる。“この店の一員になった”気がした。もう、言い訳はできない。
初めて、売り物の肉を切った
その包丁で、豚ロースを切ることになった。目安は 160〜180g。正直、よくわからない。見よう見まねで1cmくらいに切ると、なんとなくそれっぽくなる。
厚切りロースには、焼いたときに縮まないよう縁に切り込みを入れるらしい。そんなことも知らなかった。でも、この店は“知らないこと”を笑わない。当たり前のように教えてくれる。それだけで、少し救われる。
遠回りしてきた手が、思わぬところで役に立った
「手際がいいね」と言われた。社長にも、会長にも、先輩にも。正直、お世辞にしか聞こえなかった。けれど——思い出した。昔、ソムリエをしていた頃。フランス料理店で、ひたすらパンを切っていたことを。
ワインを出し、料理を運び、テーブルを見ながら、パンを切りお客様にサービスをしてきた。あのときの動きが、ここでそのまま出ていた。意味なんて考えていなかったけれど、ちゃんと残っていた。
人生でやってきたことは、どこかでちゃんとつながる。
76歳の精肉職人に圧倒された
ふと見ると、76歳のおばあちゃんが包丁を動かしていた。鶏もも肉を開いて、
- 40gを150枚
- 80gを75枚
淡々と、終わらせていく。ボクも隣でやってみる。40g……難しい。80g……足りない。気づけば、おばあちゃんはもう次の作業に進んでいる。早すぎる。
まとめ
精肉店3日目。正広の包丁、豚ロース160〜180g、76歳の背中——ボクにとっては、全部が初めてだった。
追いつけない。それでも、見守ってくれる人がいる。こうやって人は、少しずつ“働く理由”を持つのかもしれない。誰かの背中、何気ない一言、今日できた小さな一歩——そんなものの積み重ねでできている。
2日目の記事の続きです。4日目以降は、また別の記事で書いていきます。
※本記事は個人の体験・記録です。勤務条件や仕事内容は店舗によって異なります。転職を検討される際は、ご自身の状況に合わせてご判断ください。


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