安全靴なのに、厨房で滑った
その日、ボクはワークマンで買ったばかりの新品安全靴を履いていた。
午前中後半——スライサーで豚肉500kgを切る作業が始まった。
安全靴なのに、滑る。
朝の配達は、順調だった
午前中前半の配達業務は、特に問題なし。安全靴だけあって、車の運転も差し支えない。軽いし、足も守られる。
「いい買い物をしたな」——このときは、そう思っていた。
午前中後半。スライサーで豚肉を切る作業が始まった。
500kgのスライサー作業で、床が戦場に
500kg。
500kgの肉を切る。切るたびに床が濡れる。切れ端が落ちる。その環境を、新品の安全靴で歩いた。
切り材を包むシートから、水分が滴る。スライサーにセットするたび、床に水が広がる。500kg分。さらに豚肉の切れ端もぽろぽろ落ちてくる。床には水。ところどころ肉。
500kgは数字じゃない。滑った理由そのものだ。
結果……最悪だった
滑る。
安全靴なのに、滑る。
ビックリした。安全靴って、滑らないためにあるんじゃないのか。
ニューバランスの安全靴は、多少は滑る。でも、少し気を使えば問題ない。それと同じ感覚で歩いたら、冷や汗ものだった。
激しい滑りのせいで、歩き方までおかしくなる。変に足へ力が入る。そのせいで、無駄に足が疲れる。
午前中の「いい買い物をしたな」は、昼前には「なんでこれを選んだんだ」に変わっていた。
厨房は滑る。精肉店で働き始めてから、久しぶりに思い出した。「そういえば、昔のレストランでも同じことで悩んだな」と。
レストラン時代も滑っていた
この「厨房は滑る」問題。ボクは知っているはずだった。フレンチレストラン時代、厨房を通る動線で黒皮靴が滑った。シェフの勧めでecco(エコー)に替えたら、問題は解決した。
「仕事の現場の床は、思っているよりずっと滑る」——あのとき、そう学んだ。
……その教訓を、きれいさっぱり忘れていた。45歳、ボクである。
BMZをワークマンで買った
入社当初は、ニューバランスの安全靴を履いていた。ドライバー時代の残りだ。色が黄色で、厨房の汚れが目立ちすぎる。買い替えを決意した。
ドライバー時代から使っていたニューバランスの安全靴。黄色いので、厨房の汚れが目立つ
そのあとは、アシックスの6,000円台のランニングシューズで凌いだ。滑りは気にならなかったが、3ヶ月ほどでソールがへたった。
Amazonで見つけた[BMZ] マッスルブースター セーフティシューズ。ワークマンで試着して、約4,000円で買った。
そして翌日、職場で履いてみた。……冒頭に戻る。
滑る。安全靴なのに滑る。
4,000円だから腹が立ったのかもしれない。でも、たぶん違う。期待して買ったのに、仕事で履いたら裏切られた。それが不愉快だった。
しかも、だ。この靴、見た目がすごく気に入っている。安全靴っぽくない。普通のスニーカーのように見える。……だから、嫌いになれないんですよ、この靴。
ワークマンで買ったBMZ。見た目は普通のスニーカー——厨房で履く前は、こんな感じだった
Hyper V スタッドレスソールを買った
滑るから、はい終了。とはいかなかった。見た目が好きだから、諦めきれない。調べた。
厨房だけの話じゃなかった。雨の日、マンホールはもちろん、こんなレールの上でも滑る。
雨の日のレール。厨房の油以前に、こういう濡れた地面でも滑った
油以前に、雨の濡れた地面に危ない靴だった。
警視庁に載っている「絆創膏を貼れば滑り防止になる」というので、試した。歩き回るのが大前提の靴では、絆創膏なんてすぐ剥がれた。それもそうだ。それなりの溝が造られているソールだ。しかしその溝たちが絆創膏の設置面を逃してしまって、粘着性が半減してしまう。だから剥がれてしまう。
それでも諦めきれない。さらに調べる。どうやら、ソール部分に貼る「滑り止めシール」のようなものもあるらしい。そして見つけたのが、靴に「滑り止めを纏わせるゴム」——Hyper V® スタッドレスソール(日進ゴム・SS-02)だ。
厨房用というより氷雪用の製品だけど、冷凍庫や厨房で滑らなくなった、という口コミを見て、半信半疑のまま試すことにした。
Hyper V スタッドレスソール SS-02(L)
安全靴の底に装着するタイプ。箱の説明どおり、前(つま先)と後ろ(かかと)に引っかけて、ゴムを伸ばして履く。
装着方法。①つま先に引っかける → ②かかとを引っ張る → ③全体を伸ばして固定
BMZに付けてみた。つま先とかかとにゴムが引っかかる。見た目は一気にゴツくなる。
つま先にゴムを引っかけた状態
横から見ると、つま先・かかと・側面をゴムが覆っている
底面。格子状の滑り止めパターン。中央にBMZのロゴ
結果……今のところ、全く滑らない。
どこで試したか——
- 冷凍庫の床——滑らなかった
- 厨房の床(水で濡れたところ)——滑らなかった
- 500kgのスライサー横——足が勝手に滑る感じがなかった
あの日、新品のBMZだけでは歩けなかった場所を、Hyper V を付ければ歩けた。半信半疑だったけど、実際に履いてみると、今までとは明らかに違った。
すごい。あれだけ滑っていた靴が、今はかなり安定している。箱には油には弱い(非耐油)とも書いてあった。精肉の厨房でどこまで持つかは、まだ分からない。
今度は足がだるい
ただし。世の中、そううまくはいかない。
Hyper V を付けたことで、BMZの見た目はゴツくなった。同時に、少し重くなった。だんだん、足のだるさが出てきた。
まとめ
……結局、どっちを履けばいいんだ。
滑らない。これは素晴らしい。
ただ、Hyper V を付けたことで、少しゴツくなった。そして、少し重くなった。
この靴を履き始めて、まだ2日目。もう少し履けば体に馴染むかもしれない。だから、今の時点で「失敗だった」と決めるのは早い。
ただ……足はだるい。
45歳。仕事も靴も、一発で正解にはたどり着けないらしい。精肉店の修行は、肉だけ切っていればいいわけじゃない。靴ひとつ選ぶだけでも、滑ったり、疲れたり、悩んだりする。
まあ、そんなもんか。
明日も仕事。とりあえず、滑らないことだけは確かだ。
※この記事は筆者自身の実体験をもとに書いています。商品の性能や現場での使い心地は個人の記録であり、すべての方・すべての環境に当てはまるものではありません。


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